MCS支援プロジェクト

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【プロジェクトの背景】

1.多種類化学物質過敏症(化学物質過敏症)の社会的状況

多種類化学物質過敏症(MCS)は、環境問題が深刻化する中での世界的な健康課題です。後天性の慢性的な疾患で、多臓器に再現性のある症状をともない、相互関連性がない多種類の極微量な化学物質曝露に反応する(1999 consensus)とされています。

世界各国の罹患率は、人口の約10~15%と報告され、日本における患者数も推計70万人以上と報道されています。しかし、MCSは、まだ、どのような病気なのかがはっきりと解明されず、MCSの患者さんは十分な医療を受けることができません。

MCSの患者さんは、わずかな化学物質の曝露によって症状が出るため、病院を受診出来ないことも多く、疫学的データが非常に少ない状態です。他の慢性の病気との区別が難しいために、診断名をはっきりさせるまでに3年以上を要しています。また、微量の化学物質によって症状が出る患者さんは、症状が出ないように化学物質を避けて暮らしているため、他者とのお付き合いが難しい状態になります。そのため、社会的に孤立してしまいがちです。これらの患者さんは、適切な治療や指導を受けられていないこともあり、罹患期間が10年以上になっていることも珍しくありません。

 

2.MCS患者さんの医療と看護の状況

MCSの症状が重くなると、他者と一緒に生活ができなくなります。そこで、重症のMCS患者さん達は、山の中や海岸でテントを張って孤独な生活をし、日本国憲法で保障される「健康で文化的な最低限度の生活」が出来ていない状況になっている場合もあります。また、これらの患者さんは、電磁波過敏を訴えることがあり、電気製品を一切使用しない特殊な環境で暮らすようになることもあります。当然、そのような暮らしが続けば、精神的なバランスを崩すこともあるでしょう。

MCS患者さん達は、医療者に助けて欲しいと思っています。しかし、一般的に、看護師さんは、化学物質が多く使われる病院の中で仕事をしており、化学物質の曝露を避けたいMCS患者さんは、看護師さんには頼ることができないと諦めてしまっています。

これらの患者さんの看護を行っているのは、患者会のメンバーです。つまり、症状が軽快した先輩患者さんが、発症したばかりの患者さんや重症の患者さんに寄り添い、生活上の支援や指導などをしています。しかし、患者会のメンバーは、もちろんMCS患者さんなのですから、体調変化などによって支援状況はどうしても不安定になってしまいます。健康状態の悪い患者さんが看護師の役割を担って働いている状況を、看護職は見過ごしていてよいのでしょうか。

 

【プロジェクトの目的と概要】

1.プロジェクトの目的

このプロジェクトは、以下の①と②から成り立ちます。

① MCS患者会(患者グループ)の連携を強化するために、患者会代表者と看護師が交流できるwebシステムを構築します。

② 看護師免許をもっている方が、新しい看護学(臨床生態看護学)を学び、MCS患者さんをサポートするシステムを作ります。

つまり、①は「たくましい患者会を作りあげるプロジェクト」であり、②は「眠っている看護の力を目覚めさせるプロジェクト」ということになります。

これらの2つのプロジェクトの目的は、患者会(患者グループ)と潜在的看護師という社会的な2つの潜在能力を強化することを通して、MCS患者さんの生活の実態や看護支援方法に関するデータを蓄積していくことです。

2.プロジェクトの概要

1) たくましい患者会を作り上げるプロジェクト(患者代表者が参加するプロジェクト)

このプロジェクトは、以下のような内容で進めていきます。

(1)全国のMCS患者会の活動と課題に関する実態調査(質的研究)を行います。
(2)各患者団体の代表者には、定期的な心理健康調査(アンケート)への協力をお願いします。
(3)各患者団体の代表者には、web上の定期的なミーティングに参加していただきます。
(4)各患者団体の代表者には、訪問看護を必要としているMCS患者さんのご紹介をお願いします。
(5)各患者団体の代表者は、看護師が訪問看護を行う際(可能な限り)同行をお願いします。

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2) 眠っている看護の力を目覚めさせるプロジェクト(看護師が参加するプロジェクト)

このプロジェクトは、以下の内容で進めていきます。

(1)全国の看護師さんに、臨床生態看護学の必要性について呼びかけます(webページ,講演会)。
(2)看護師免許を持っている方を対象として、臨床生態看護学のweb教育を行います。(希望者に対して)
(3)臨床生態看護学のweb教育を受ける看護師さんは、原則として、スクーリングに参加していただきます。
(4)臨床生態看護学を学び終わった看護師さんには、MCS患者さんを訪問看護していただきます。

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